石の花 ─ ロシア・ウラル地方に伝わるおはなし

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石の花 ─ ロシア・ウラル地方に伝わるおはなし

2002
新読書社
パーヴェル バジョフ, 江上 修代, 芦川 雄二


豊かな色に彩られた6つの話がおさめられています。
夢想空間を心地よく体験できる特異な本ではないでしょうか。ひとつの人生を感じさせるくらい長い時間を一編の作品のなかで実現させているのが特徴的だと思います。そして必ずしもハッピーエンドにならない展開も現実的で素敵です。

自分の理想や考えに正直に生き貫く私の人生を応援そして激励してくれるように思いました。不思議と現実味を帯びながら、それでいて読んでいて実に軽快、心地よい夢物語です。

「空色のへび」…この題名自身どうでしょう、私は好奇心を大きくそそられました。哲学的考察をするなら相対する2つのものがキーワードでしょうか。とりわけ好奇心をどんどん掻き立てられる話です。タイムスケールは短いですが、空想世界は深いです。

「金の髪」…広大な領域に展開される動的な「長い髪のラプンツェル」といったイメージです。目的実現のための知恵と勇気をいただきました。ここでもある程度の長い時間は欠かせない話となっています。

「エルマクの白鳥」…真の自由を求め、冒険、野望、勇敢な人生を描いた伝記物。長大なタイムラインと大いなる愛情物語が、必要不可欠にして簡潔明瞭に、時間経過を感じさせないほど短く美しく綴られます。社会を変える時間、人望、勇気、そして未婚でいても強い心の絆で結ばれている男女について考えさせれました。願わくば私も白鳥の夫婦(つがい)のような人生終止符を打ちたいと思わずにはいられません。

「青い老婆シニューシカの井戸」…とくに後半、男女の違いはあるけれど「アリーテ姫の冒険」をイメージしました。富と知恵そして知恵の伝承、約束、物理的なことなども印象的に記憶に残っています。「瘤取り(じいさん)」や「花咲爺」のイメージもうかがえます。極めて短編ながら興味深い作品です。

「石の花」そのつづきの「山の石工」…この本のタイトルにもなっているとおり映画にもなったロシアでも有名な話です。
この本を読むきっかけになったのも、この映画の存在を思い出したことに因ります。
真の芸術家だったり真の職人気質をもちあわせていれば、「石の花」を追い求めるのはごくごく自然のことのはずです。
前半「石の花」は創造する人の自己葛藤等々芸術論、音楽の世界に照らしてみてベートヴェンの第9シンフォニー全体構想をイメージしました。後半「山の石工」はラブストーリーにあたるかしら。当然のように、好奇心をかき立てられ読みやすく、どんどん引き込まれていき、さらに空想の世界が広がりました。こういった話に耳傾け、ひとときでも素直に、まじめに、正直に、謙虚に、誠実になれる自分と対峙する時間をもち、しあわせをイメージできればどんなに素敵でしょう。

カテゴリ:和書
満足度:★★★★★

(昨年2004年11月07日・記)