寸劇の失敗談(若月俊一著「村で病気とたたかう」)引用

 農村医学の問題をいろいろ述べてきたが、ここで、まえにのべた演劇班のその後について紹介しておこう。
 さきに私は、わが演劇班こそ病院従組の活動の精華だといったが、しかしこの活動の中にも若干の失敗がなかったわけではない。
寸劇の失敗談
 昭和34年の話である。その頃私どもは「コン吉シリーズ」というのを作つていた。病院の出張診療班が、部落の検診が終わった後などで見せる、ごく簡単な劇である。診療に行った医者や看護婦などが三人位でできるもので、従来のように、劇場や映画館などを借りて大人数でやるのとちがい、部落の中のちょっとした集会場ですぐできるという、大した道具もいらない、芝居というよりむしろ歌入りのかけあい漫才に近いものである。大いに笑わせながら、農村医瞭や医学の問題をみんなに訴えようというねらいをもつもので、その頃喧伝された中共の農村文化工作隊の秧歌の(ヤンコー)の形式からヒントを得たつもりであった。そのへんに私のオッチョコチョイ性があるのだが、ともかく私どもはそういう、劇というよりむしろ歌をまじえたショウみたいなものに力を入れて、私どもの予防医学宣伝活動のお家芸として、大いにうぬぼれていたものだった。毛沢東はかねてから、農村医療にはたいへんな力を入れている。しかし、医療と文化工作とを統一したかたちでやっているのは、こちらさまが一歩さきじゃないか……。
 そのシリーズの一つに「はらいた」という一幕物があった。これが間題になったのである。私どもの病院では昭和21年から毎年、5月21日、22日の臼田町小満祭に、病院を開放して、「病院祭」として衛生展覧会をやるのが習いである。劇や映画も見せるし、血圧測定、料理講習、農民体操指導などもじっさいにやる。その機会を利用して、地元の日頃病院がやっかいになっている有力者をお招きして、接待の宴会も開く。(これもまた重要な行事なのである。)出席の有カ者は、農協の組合長さんなどが主であるが、もちろん市町村自治体、地方事務所、保健所、学校、瞥察、消防団など、そのほか医師会の長などもお見えになる。
 さて、その年の病院祭の時、衛生展覧会もだいたい無事に終ろうという2日目の午後、ご接待の宴会さえ済めば万事終り、やれやれというその席上で、どうもK組合長さんの様子がおかしい。だいぶ荒れているようなのである。私は何となく不吉な予感がして、あわててお酒の銚子を手に持ったまま、K組合長さんのところへ駆けつけた。
 「院長、けしからんぞ。」組合長さんは私の顔をみるとヒゲ面をまっかにふくらませて、ハッタとにらみつけるのである。「院長、おれは今日は納得せぬぞ。なんだい、ありゃあ。」吹きかける組合長さんの鼻息は、すごく酒くさい。「はあ。」「はあじゃないよ。ロッキードとは何だ。ロッキードとは。ロッキードと農村医療といったいどういう関係があるというんだ。さあ、そのわけを聞かせろ。」しまった。やっぱりあれだったか。こいつはまずいことになった……。
 じつはその宴会の席上、皆さんにお見せしたのが「はらいた」一幕なのであるが、この中にロッキードの話が出てくるのである。父親が腹痛を起こし、大変苦しむが、医者に診てもらおうとしない。結局息子のコン吉が医者の薬をもらつて飲ませたら、回虫を口から吐いて、あとはケロリと治った。コン吉が、お父ちゃんは早く医者にかからないからいけないんだ、というと、父親が、医者というやつは大嫌いだ。おつかないこともおっかないが、なにしろ保険証をもつていっても現金がたんといるからな、という。コン吉が、それじゃ保険証だけですむように自己負担分を村から出してもらえぱいいじゃないかというと、父が、冗談いうな、それでなくとも保険料が高くて困っているのに、そんなことをすりゃ、またぞろ値上げされるにきまってるじゃないか。そこで、コン吉が、じゃ国から出してもらえぱいいじゃないかという。
 父「だからお前はウルトラだっていうんだ。そんな金が政府のどこから出る。そんなことすりゃ、結局俺たちの国税がふえるだけのことじゃないか」。コン吉「だってお父ちゃん、政府がロッキード買うのをやめたら簡単じゃないか。あれ一台五億円だろう。あれ百台分あれば、国中の国民健康保険の医療費が全部まかなえるんだっていうぜ」。父「へえ、ロッキードはたしか二百台買うっていう話だったな」。コン吉「そうさ。だからそれを半分にしてもらえばいいわけだ」。そしてコン吉の「やめてちょうだいロッキード……」の歌(「隣組」のふしで)になる。おもしろおかしいセリフや歌のやりとりはまあいいとして、考えてみれば、こんな理屈っぼい、ナマの言葉の羅列で、ちがった考えの人たちを納得させうるはずはない。
 形式が簡単なだけに、どうしても内容が説明的になりやすい。そこに誤解が生ずるすきがある。これでは、私が師と仰いでいる宮沢賢治先生の教えに反するではないか。先生が劇をやれとおっしゃったのは、ナマのリクツをふりまわすな、ということではなかったか。農民には、情理かねそなえた説得でなければいけないという教えではなかったか。──第一集まった方々には再軍備賛成の、農村の指導者が多いのである。中国などとはちがうのである。「わしはな院長、再軍備に賛成なんだぞ」と組合長さんは現に私に向ってそうはっきり宣言した。再軍備なくして、どうして日本の独立を保つことができる。備えあってはじめて憂いなしじゃないか。」「いや、すみませんでした」と私は率直に組合長さんに頭を下げた。かげでなく目の前で批判されたことは、私にとってうれしいことであった。(もっとも私がこの組合長さんから叱られたのはそれで三度目になる。一度は病院のマッチに農協のマークが入ったものを使ってないといっておこられ、もう一度は病院の看護婦さんの多くが、農協組合の綱領を知ってないといって、叱られた。)
 私はこのまじめな熱血漢の組合長さんを尊敬しているので叱られてもさほど苦にはならなかった。酒の相手をしながら、30分間もお説教をくらったが、ひたすら謝罪の意を表した。たしかにウルトラだったのは、コン吉ではなくて作者の私だった。私は知らないまにいい気になって現実を見あやまっていたのだ……。
 そのうちに組合長さんはおもむろに懐中から一巻をとりだした。「これこそ拳々服膺しなけれぱいかん」と大原幽学研究の第何頁かを読まされたのである。指示されたそこには、「医師生涯心得之事」があり、その中に「飲酒生涯之を禁ずる事」の項が厳然とひかえているではないか。組合長さん自身はもうへべれけに酔っぱらっていて、私には医者なるがゆえにこんりんざい酒を飲むことはならぬという……。


年金はじめ道路特定財源の不正利用の責任を明確に、

そして官僚、天下りなど、関与した人間の責任追究、法的制裁を!望む!!


イージス艦などすべてはおなじ!
莫大な税金を使って、結局は国民を殺し、
責任逃れを最優先に隠し立てするようなものどもに、
わたしたちのしあわせの実現は望めないことは明白だ!

税金の使途は、国民の前に詳細を明確に公開すべきです。
税金収入と出金、用途をすべて国民の前に公開すべきです。
公安など非公開が求められるものも、数字だけでも公開すべきだと思う。

よく口にしているのですが、
真の民主主義国家の実現がかなわないのなら、
独立できないのなら、どこかの植民地にでもしてもらうほうが、
案外、国民にとっては、しあわせなのではと思う。

太字は、ぼくの強調したい想いの一部です。



単純な「革命理論」(若月俊一著「村で病気とたたかう」)引用
http://blogs.yahoo.co.jp/hagetaka0/53642284.html

労働災害補償をもとめて(若月俊一著「村で病気とたたかう」)引用
http://blogs.yahoo.co.jp/hagetaka0/53719648.html