うるさいけど静かだよ
乗用車らしきエンジン音。タイヤと道路の摩擦する音。オートバイのエンジンを噴かす音。
軽そうなのから重そうなものまで、大きな鉄のかたまりが、機械が走行する音が響いている。高い音から低い音も聞こえる。エンジンをかけたりブレーキを踏んだりの音、音、音。
救急車のサイレンが遠くで鳴っている。どうやら、こちらには来ずに手前の信号で右に向かったのだろう。
遠くからこっちに押し寄せては離れていく走行音。たくさんの波形が幾相にも不規則に重なりあいつつ表れては消えて行くイメージを描く。
カラスの鳴き声もときどき聞こえてくる。
ぼくの耳から水平距離で5、6メートル左、三階下は道路、それも三叉路で信号がある。車はひっきりなしに、停車しては発進して行く。信号待ち、じっとしていられないんだろうね、エンジンを噴かしてはやめを繰り返してもいる車もある。
ディーゼル車が止まっているときは、部屋とベランダを隔てるガラス戸が、激しく振動、押し入れのふすままで震えてる。ぼくの鼓膜も、いやがっているよ。
ぼくはといえば、部屋で布団に足を突っ込み、ふすまを背に足を伸ばし、膝上にMacBookをおいて、いま、これを記している。
ヘンデルのメサイアを右耳で聴いている。もちろんスピーカーから流している音楽です。
いま、階上からベランダに面したガラス戸を開け閉めする音が届いた。
硬いスリッパででも床を歩いているのだろうか、コトコトと足音が響いてくる。そういえば、昨日は孫がおじいさんおばあさんのところへ遊びに来ていたのだろうか、子ども走り回る音が響いていたなぁ。
うるさいね。考えようによっては、気が狂うくらいうるさいよ。
でもね、どこか静かだよ、ぼくはね…
みんな、そう、考えようによっては…、
気の置きよう、気のもちようによって、いいようにも悪いようにも、なんとでも変わるんだよね…
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