スペイン旅行記―カレル・チャペック旅行記コレクション (ちくま文庫)



チャペックの鋭い観察眼と
知識、知恵を伴侶に
ともに旅行するよろこびを味わえます

もし、ぼくがスペインへ行くなら
地球の歩き方に加えてこの「スペイン旅行記」を
手にしないではいられないだろうと思われます(笑!)

ベラスケス、エル・グレコゴヤ、その他の画家(目次順)
わたしたちが美術で学ぶ以上に造詣深い話が展開されています

第三章では園芸家チャペックの植物への想いが熱く語られています
後半、ムルシアバレンシア地方のところでも
地中海地方の豊かな自然、海とオレンジの芳香が風に漂ってきます
余談になりますが、また、今回もGoogle Earthを活用しました
中心市街の空撮からはパテイオス(中庭)がよくわかります
四角い建物の口の字の真ん中が、たいてい影で暗く写っています

とりわけ時間を費やして見つけ感動したのが
『この谷は、キリスト様の磔(はりつけ)の日に開けたと言われている』に始まり
諸説解説後チャペック曰く祈りを捧げるかのように合わされのばされた指に似ているそして、チャペックがこんなものは生まれて初めて見たという
「鋸山モンセラート」です(笑)
Monistrol de Montserrat, Catalunya
http://www.panoramio.com/photo/943344
http://www.panoramio.com/photo/307295
http://www.panoramio.com/photo/901133

スペイン女性やジプシー居住区の一節も興味深いですが
闘牛やフラメンコ、ペロタという球技は
動的に、見事なイラストも加えて実に詳細に記されています
この一冊で闘牛やフラメンコが十倍はたのしめることでしょう

最後に、引用すれば長くなるので、ここでは訳者あとがきと解説から・・・
それぞれの国や民族が地域性を残しながらも、政治的・経済的・文化的に協調すること
諸民族の多様性をそのままに、互いに理解し愛し合っていこうという、本書の巻末の提案は、小国出身の相対主義者チャペックの心からの叫びであるように思われる。


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