猫町【ブックレビュー】



「ねずみのよめいり―日本昔ばなし (日本昔ばなし)」で
金井田英津子さんの感性に惹かれ大好きになりました
で、ひととおり作品に触れたく思っての二作目になります

画:装丁、デザイン 金井田英津子とあるように
ひとつの世界、金井田英津子さんの世界が
この一冊に込められているように思いました

ぼくのわずかな乏しい読書経験で
読んでいてイメージされたのは
稲垣足穂一千一秒物語」や中勘助銀の匙」そして
次に手にしようと思っている夏目漱石夢十夜
内田 百けん「冥途」の世界とも恐らくつながるのだろうと想像

これまでに読んだ多くのSF小説
ミヒャエル・エンデの「モモ」にも共通した世界が展開

混沌の世界を好むぼくの頭のなかを掻き乱し
たのしく遊ばせてくれ、夢幻の世界へ誘ってくれました

ずっと、この本をたのしんでいる間、どういうわけか
C.P.E.バッハピアノソナタがBGMにぴったりでした

それにしても、画はもちろんのこと
2、3色の洒落た、渋すぎる色づかいに見る目を飽きさせません
見るたびに、またページをめくるたびに新しい何か発見があるんです
安野光雅「旅の絵本」の世界などとは明らかに異なる異質な
とりわけ時間軸では過去に宇宙的な規模で広がっている発見なのです!?

リッチブラックな世界を見事に創造されているんです
面付けなど印刷のことを知っている身からすれば
ぼくには想像もおよばない緻密な計算がされているのかと思います
いわゆる特色インクと画表現、レイアウトの完成度は
ぼくがいうのもおこがましいのですが実に高く、贅沢な作品です

もう、とにかく、手にしていて、うれしくなります
ページを繰るのが、たのしみなんです


萩原朔太郎詩集を高校時代に読んで感想文を書いた
そのときは、おもに「青猫」のなかの「鷄」について記した
いまだに、『しののめきたるまへ』と『とをてくう、とをるもう、とをるもう』
だけはしっかりこびりついていて頭から離れません
このときのために、この出合いのための通過点だったのでしょうか!?
そうだったとしても、そうでなくても、いま、ぼくの目の前に
この本、この小説、金井田英津子さんの世界がある、この出合いに感謝したいです



星5つ(評価:星5つが最高、星1つが最低)