万巻の書を読み、万里の道を行く/富岡鉄斎(7)

 



「万巻の書を読み、万里の道を行く」

この境地に憧れます・・・



『万巻の書を読』むには到底遠く、

書を読み多くを学べば学ぶほど社会との格差を重く背をわされ、

『知に働けば角が立つ』ようで、

己の稚拙、愚鈍、小さく哀れな姿に向き合うことになります。



江戸っ子じゃないけれど『宵越しの銭は持たぬ』主義で生きてきて、

蓄えることをせずに、稼いだ後から消費してきたことで、

『万里の道を行』けず、『夢は枯れ野を駆けめぐる』ように、

架空の旅を強いられ、そこに遊び学ぶことに人生を戯れるしかない身です。





「万巻の書を読み、万里の道を行く」という董其昌の言葉を生涯にわたり座右の銘とした彼は、「南画の根本は学問にあるのじゃ、そして人格を研かなけりゃ画いた絵は三文の価値もない。」といい続けている。
文人世界」を憧憬し、読書と旅に明け暮れ、書画の制作を刻々の生の証ととらえたところに鉄斎芸術の特色がある。
 巧拙を超え、気宇壮大。雅趣に富み、生き生きと躍動する韻致が充満し、自らの思想を表現したのが鉄斎の書であり、それはまた彼の「文人世界」そのものにほかならない。