目覚めよ、と呼ぶ声あり(私たちのリストラクチュアリング)

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目覚めよ、と呼ぶ声あり
<J. S. Bach: Wachet auf, ruft uns die Stimme BWV. 140, BWV. 645>
(私たちのリストラクチュアリング)

バッハと私、二人で話をしたんですよ。もちろん、夢のなかでのことなんですがね。話の中身はすっかり忘れましたが、バッハその人となりは、はっきり覚えています。

純真無垢で寡黙、思いやりとかやさしさにあふれたあたたかい人。いつも好奇心に輝き、神、自然、人に敬虔かつ素直で、おごりたかぶりのない、堅牢な精神の超越なくしては、みいだしえない人格の持ち主。自己を確立し、それを貫き実行するというような人でした。

人間に生まれてきて、人間を全うすることの喜びを噛みしめている。厭世観にとらわれることなく、人生の喜怒哀楽すべてを甘受している。己のみならず、全人類を愛することに重圧など微塵も感じない。人々のなかに、ひとりの人として存在していることに、なによりの喜びを感じている。「大いなる愛」を前にして崩れてしまうであろうところを、彼はむしろ惜しまず愛を求め、そこに身を投じてさえいる。

超人―ニーチェのいう実在の本質たる権力意志を体現し、自発的に高い価値の人格を発揮・力行してゆく天才で、肉体的にも精神的にも風俗にすぐれ、それを支配する自己目的者をいう。(広辞苑

夢のなかのバッハに、元来人間に備わった、あるべき姿を教えられたように思う。バッハからの熱いメッセージ、彼が表現するところの音楽、その音、一音一音に宗教・国籍・言語等あらゆる壁を超越した人類愛、「大いなる愛」を読み取ることができれば、どんなに幸せなことでしょう。

バブル経済崩壊、平成不況、清貧の時代、質と実を生活のコンセプトとする社会を提唱しているいま、音楽を捧げてくれる「愛のメッセンジャー」バッハに、私たちが回答できることはなにか、問い直さずにはいられない心境です。

子らが大人になったとき、父や母、先達の功績を讚え、夢を遂行しつづけてくれるよう、いまからその夢の基礎を築こう。地球人の未来のため、子供たちの明日のため、私たち大人が、実現できる素敵な夢を創造し、建設しなければならないときです。

(1993年9月)