【バイオミミクリーの九つの基本原則】引用備忘録

 ヨーロッパでは昔から、知恵を運んだ四人の博士は東から来たとされている。ゆえに、今でも、教会は必ず東の方に正門を向けている。それが「オリエンテーション」と呼ばれるように、持続可能なものづくりの知恵と技術を、東から、日本から発信したいというエールを込めて、本書を企図したのだ。
 こうした自然に学ぶものづくりについては近年、欧米でも注目を集め始めている。このブームを創出した一人が、BIOMIMICRYを著したサイエンスライター、ジャニン・ベニュス女史である。自然の叡智からの確信を意味する" Innovation Inspired by Nature"を副題とする本書は、『自然と生体に学ぶバイオミミクリー』という邦題で、来年、オウム社からの出版も予定されている。
 バイオミミクリーは、生物を意味するバイオと、模倣を意味するミミックの合成語である。直訳は、「生物模倣」である、自然に学ぶものづくりと相同の言葉である。
ベニース女史はその冒頭で、バイオミミクリーの三つの前提を次のように述べている。
 (1)自然をモデルにする
 (2)自然を評価基準にする
 (3)自然を良きメンターとする
 そして、バイオミミクリーの三段階として、
 (1)パターンとしての自然の形態の模倣
 (2)プロセスとしての自然の挙動の模倣
 (3)エコシステムとしての自然生態系の模倣
を挙げている。
 また、女史が提言するバイオミミクリーの九つの基本原則を、ここにそのまま引用してみたい。

・自然は、日光を燃料にする
・自然は、余分なエネルギーを使わない
・自然は、形態と機能を調和させる
・自然は、すべてのものをリサイクルする
・自然は、協力するものに報いる
・自然は、多様性に投資する
・自然は、地域の叡智を要求する
・自然は、内部からの行き過ぎを抑える
・自然は、限界から力を生み出す

 さらに特筆したいのは、バイオミミクリーの未来を目指すための、四つの段階が提起されていたことである。それは

・沈思する=自然に身をゆだねること
・耳を傾ける=地球上の動植物に聞く
・伝える=自然をモデルや手段にする生物学者とエンジニアの協力を促し、多くの人々に伝えていくこと
・養い・育む=生物の多様性と天分を保護すること

である。
 この本は、こうした基本的な提言を抑えた名著であるが、実はその具体的事例として挙げられているものの多くが、日本初の自然に学ぶ技術でもある。ベニュス女史は、そうした発見を、新しいものづくり概念として「バイオミミクリー」を提唱しているが、日本の匠の歴史を知るものにとっては、それはかつての日本のものづくりシステムそのものなのである。

「BIO&GIO MITETICS 自然に学ぶものづくり 生物を観る、知る、創る未来に向けて」赤池学著 東洋経済新報社・2005年12月15日発行「序章 今なぜ、自然に学ぶものづくりなのか」より引用


一部、ぼくにわかりやすいようにレイアウト・アレンジしています。
『自然は』に始まる【バイオミミクリーの九つの基本原則】をしっかり学習したい!
そのあとの、沈思・傾聴・伝達・養育も当然のことながら示唆に富む。
ぼくの備忘録ですが、多くの人に知っていただければと思いオープンにしています。