人類という木

 
スペイン、【カタルーニャ】民謡『鳥の歌』という曲、同名の杉田かおるの歌も素敵で好きなのですが(笑)、パブロ・カザルスのチェロで有名になりました。多くのチェロ奏者の演奏で耳にしています。アレンジされて演奏されたり、歌われています。ぼくがいちばんよく耳にしているのが同郷出身の【ホセ・カレーラス】のCD"The Come Back Concert"です。最近では、渡辺香津美のギターCD"おやつ"のなかにおさめられているのがお気に入りです。

安野光雅の「空想書房」を読みました。最後の章「講演会」/「なぜかくか?」から下記引用します。
引用すること自体当然いけないのだと思いますが、これだけを引用するのは、ことさら躊躇われます。ぜひ、この前の講演内容、願わくば書籍全部を読んでいただければ、うれしいです(笑)
【パブロ・カザルス】が著した「パブロ・カザルス よろこびと悲しみ」から、「なぜかくか?」をテーマにされた講演会の最後に、「ちょっと、そのすばらしいパブロ・カザルスの言葉を読みたいと思います」と言って、下記を引用されて講演を締めくくられています。

「一秒一秒、私たちは宇宙の新たな二度と訪れない瞬間に、過去にも未来にも存在しない瞬間に生きているのだ。それなのに、学校で子どもに何を教えているのだろうか。2+2=4とかパリはフランスの首都であるというようなことは教える。いったい、いつになったら、子どもたちの何たるかを教えるんだろう。子どもたち一人一人に言わねばならない。君は何たるかを知っているか。君は驚異なのだ。二人といない存在なのだ。世界中のどこを探したって、君のそっくりな子はいない。過ぎ去った何百万年の昔から、君と同じ子どもはいたことはないんだよ。君の体をみてごらん。じつに不思議ではないか。足、腕、器用に動く指、君の体の動き方、君はシェイクスピアミケランジェロ、ベートーベンのような人物になれるのだ。どんな人にもなれるんだ。そうだ、君は奇蹟なんだ。だから大人になったとき、君と同じように奇蹟である他人を傷つけることができるだろうか。君たちは互いに大切にしあいなさい。君たちは、われわれもみんな、この世界を子どもたちが住むにふさわしい場所にするために働かなければならないんだよ。私は、今までに何と驚異的な変化と進歩を目撃してきたことだろう。化学も産業も宇宙開発も、まさに驚異的進歩を遂げた。それにもかかわらず、世界は今も飢餓と人権上の圧迫と独裁に苦悩している。われわれの行動は、依然として野蛮人に等しい。未開人のように地球上の隣人を恐れる。隣人に向かって、武器をもって防衛する。隣人も同様である。私は、人間の掟が殺すべしという時代に生きなければならなかったことを嘆く。いつになったら、人類が同志であるという事実に慣れ親しむときがくるんだろう。祖国愛は自然なものである。しかし、なぜ国境を越えてはならないのか。世界は一家族である。われわれ一人一人は兄妹のために尽くす義務がある。われわれは一本の木につながる葉である。人類という木」
空想書房∥安野光雅/[著]∥平凡社∥1991.10

パブロ・カザルス 喜びと悲しみ(朝日選書 439)∥パブロ・カザルス/[述]∥朝日新聞社∥1991.12∥
パブロ・カザルス 喜びと悲しみ∥パブロ・カザルス/[著]∥新潮社∥1978∥

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/h/hagetaka0/20010101/20010101001530.jpg